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ellie@社会人 にねんめ


by ellie_sheep

齢を重ねると、楽になる。

よく社会人の方に言われます

「学生のうちが花」
とか
「いまのうちに遊んでおきなさい、社会人ってつらいんだからね」

とかね。わたしの尊敬する某さんもブログでおっしゃっていましたが、わたしはそういう、アホに遊びまくる学生→制限の多い大人の社会人へ、という単純な図式をまったく信じません。だってわたしは齢を重ねるごとにとても楽になっていってるもの。きっと就職したら、いろいろ物理的には重荷にはなると思うけれど精神的にはとても楽になると思う、経験的にわかる。

中学生のときは自殺したかったし自分の体型とかすべてにコンプレックスをもっていて毎日針の上を歩くように緊張して学校に通っていたし、人の視線は皮膚に刺すように感じて電車乗れない時期も続いてたし、高校はいろいろな理由からアイデンティティがほんと揺らいでいてそれが崩壊しないように必死で心理学とか精神分析とか社会学とか勉強して世界をつなぎとめていて生きつないでいて、大学に入ったら(毎日いろいろ瑣末な悩みはあるけれど)自分が狂うんじゃないかとか、もしくは自分は死んだほうが楽になるんじゃないかとか思うことは、もうないもの。
社会学が趣味の領域になるなんて、思っていなかった。なんか文学とか社会学は生存するための手段だったし。フェミニズムだって死なないためだったし。だからとてもつぎはぎの理論で、分析的に考えてしまう。

大学に入って、いろいろなもの(めちゃくちゃに自分を痛めつけるとか)を諦めて、いろいろな箴言を心にとめて、本をたよりに生きて、人を好きにならないように気をつけながら生きてたら、いつのまにか楽になっていた。ひとつの例として、最初はバイト先のブラウンで絶対に私生活を知られないようにしたし、バイト先であったできごとは絶対に家や学校で思い出さないようにした。いまそういうのを諦めて、ジャズとか楽しいじゃ~んとか思ってバイトにとりくんで、楽になった、とっても。

わたしが高校までの人生で学んだのは、肉体的痛みっていうのには死という限界があるけれど、精神的痛みっていうのは底がないってことだね、狂うまで。それに人は手首にカッターあてるだけじゃ死なないとか、痛みはどこまでいっても苦痛だとか、孤独が生きるうえではもっともつらいことだとか、世の中は法律という見えない糸でがんじがらめなんだなとかそういうことで、もっと「生の」感覚だった。なまだった。世界がどーんと目の前に崖のように待ち構えていて、自分という肉体も精神もそこにおいてはすべて重荷で、いつも頭痛がして、欝で、なにかをすこしずつ殺したかった。煙草は緩慢な自殺だと思うけど、ああいう感じで。

そういうのがなくなっていくのがきっと「社会人」であり「大人」になることなんだと思う。
そして、わかっていたけどおもいっきり抵抗したね、そういう「色あせた」人になっていくのは。入試のときにも提出した、のたうちまわってたころの自分の日記は、読んでいておもしろい。

箱をあけてみれば、本当に楽になった。色あせることはぜんぜん悪いことではない。なまの世界の感覚が、世界地図を眺めるような凡庸な「世界」になっても、そっちのほうがよい。具体的には孤独ではないし、肉体的コンプレックスはまだまだあるけど軽いし、吐くことも欝になることもなくなったし、ましてや自分の体にどうかしようと思うこともない。お酒も、とってもおいしく飲めるようになった。ウイスキーも焼酎もブランデーもなんでも大好き。ビールも。

だからね、社会人の人とかに、そういううそをばらまかないでほしいって思った。
齢をとることは、時にはとてもよいことなんだと私は思うから。
学生に、つらいのは学生のほうなんだよって言ってほしい。村上春樹は、「学生時代には絶対に戻りたくない」って言っていて、わたしはそういうのにとても勇気付けられたんだから。

希望をみせてほしいよね。

あと思ったのは、そういう脅しをする類の人って、本当に学生時代のほうが楽しかったのかもしくは過去の自分は悩んでいたっていうことそれ自体を忘れちゃってるんじゃないかってことだ。いやなことって忘れるから、きっときれいな記憶しかないんだと思う。わたしでさえ、たまに学生時代はよかったなんて思おうとしてしまうこと、あるもの。
by ellie_sheep | 2006-02-10 02:03